Masters of Sound Nick Luscombe

ブロードキャスター、プロデューサーとしてイギリスの国営放送BBCラジオに携わるほか、DJであり、フィールドレコーディングで採集した音を用いてトラック制作も行うなど、あらゆる側面から音に関わり続けているNick Luscombe(ニック・ラスコム)。オーディオに関して深い知識を持ち、現在は東京とロンドンに拠点を持ち、行き来しながら仕事を続けている。

1990年代前半にBBCラジオのスタジオで、サウンドエンジニアとしてマイクやミキサーの卓について学び、ラジオで音楽を届ける仕事からキャリアをスタートした。そこからプロデューサーとして番組制作を行うようになり、プレゼンターとして番組に出演し、音楽を選ぶようにもなった。イベントでDJも行うのだが、イベントでは大勢に向けて音楽をプレイして場を作ろうとする。しかしラジオでは、リスナー個人に向けて音楽を選び、話しているような感覚があるから、より親密な発信方法だといえる。その両方の形で音楽を届ける仕事ができているのはとても嬉しいことだ。”

仕事として音楽に携わるようになってから、すでに30年ほどのキャリアを誇っているが、そもそもラスコムは自身を「サウンド・コレクター」と語る。日本語に訳すと、音の収集家。どのように定義づけることができるだろう。

若い頃はとにかくレコードを買っていた。今ももちろんよく買っているが、そうやって色々な音楽を聴き、レコードを集めていると、徐々に音そのものがどれだけ豊かで、重要なものであるのかということに意識が向き始めてくる。たとえば街の音であったり、自然の音であったり。それからフィールドレコーディングを行うようになった。サウンドスケープ(音景)というものが奥深く面白いものだと感じるようになり、あらゆる小さなノイズであっても逃したくないと思ってレコーディングを続けている。音に対するある種のオタクなのかもしれない。”

街によってサウンドスケープはそれぞれに特徴を持つ。たとえば、東京とロンドンの地下鉄を比較するだけでもその違いがよくわかる。ロンドンの地下鉄の駅はとても静かで、ゆっくり電車が近づいてくる音が聞こえると、静かにアナウンスが流れる。一方の東京では、コンスタントにアナウンスや音楽が流れ、駅によっては電車の本数も多く慌ただしく音が変化する。ラスコムは、そうした音のレイヤーをどの場所に行っても楽しんでいるという。

では、ノイズと音楽には、どのような境界があるのだろう。

非常に難しいし、どう区別するのかはとても興味深い作業だ。ノイズミュージックというジャンルが日本は傑出しているし、ノイズを用いて音楽を作っているわけだから、そこに厳密な境界線が存在するわけではないのだと思う。飛行機が飛び立つ音を聞いた時に、その強烈な音をただの騒音と捉えるか、そこからパワフルで美しい音を感じるのかは個人差があるだろう。私はそこに区別を置くことなく、いずれのノイズからも「音」としての魅力を味わいたいと思っている。騒音も含むあらゆる音が、音楽になるはずではないだろうか。”

ラスコムはキャリアのスタートに位置するBBCラジオでのサウンドエンジニア時代から、KEFのスピーカーを扱ってきた。

“BBCのスタジオで働き始めた当時は、まだテープを剃刀でカットして編集するようなアナログな時代だったが、そこには1950年代以降の時代ごとのスピーカーやミキサーが置かれていて、そこにはKEFの機材も含まれていた。そのサウンドに惹かれて早くから自宅でも使うようになったが、東京に引っ越してきて、部屋があまり広くないので、特にコンパクトでありながら最高音質を味わえるKEFの恩恵を受けている。

そしてヘッドフォン「Mu7」も愛用しているという。

最高だよ。まずパッケージが届いた瞬間から、デザイナーのロス・ラブグローブが手がけた未来的で美しい卵のようなシェイプがワクワクさせてくれる。実際に装着すると、まず快適で、装着するストレスが限りなくゼロに近い。どれだけ音質が良くても、そこがまず重要だ。「Mu7」を装着して音を出せば、自分だけの世界に没入することができる。すごく暖かいサウンドに包まれるような感覚が味わえるんだ。音楽を楽しむだけではなく、このヘッドフォンで映画を見れば、まさにその世界に身を置いたような感覚が生まれる。スペシャルなヘッドフォンだと思うよ。”

Nick Luscombe(ニック・ラスコム)

ロンドンと東京を拠点とするBBCブロードキャスター/ラジオ・プロデューサー/DJ/音楽コレクター。BBC Radio 3の“Late Junction”や“Flomotion / New Ratio”といったラジオ番組において、長く音楽セレクトに携わり人気を集めている。フェスでのDJプレイ、現代美術家とのコラボレーションにも携わるほか、自ら創業したMSCTYでは、音楽アーキテクトとして空間における音楽設計を世界各地で実施している。

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